飲み屋相手の商売をしている私は、その日の仕事帰りにいつものパチ屋へ立ち寄った。
いつも通り北斗優秀台の空きを求め店内を徘徊。
データ機をポチポチ押していると突然「アレ?○○君!君もスロットなんかやるんだ?」と声をかけられた。
振り向くと、そこには得意先の某大型キャバクラのオーナー(30代後半)が北斗を打っていた。
ぱっと見は優しそうなリーマン風だが、その正体は恐らく組関係者という危険人物である。
「あれ??遠藤さん(仮名)奇遇ですね。遠藤さんもスロットを?」と訊ねると、
「こないだ店のコ達に誘われて打ってみたんだけど、ビギナーズラックか大勝ちしちゃってね。
今じゃすっかり北斗バカだよ。でもそれからは負けっぱなしだけどね」と言い爽やかに笑った。
で、成り行き上私は隣の空き台(BB20回程の糞台)を打つ事に。
遠藤さんは初当たりが多いが連荘率が悪く、私は初当たりが悪いものの5?6連を繰り返していた。
2人とも出たり飲まれたりの展開ながらも、冗談を交えつつ適当に楽しみながら打っていた。

しばらくして遠藤さんの台に2チェから北斗緑オーラ降臨。
「北斗揃いなんて久しぶりだな。いやあ緊張するなあ!」
「俺、緑オーラが一番好きなんですよ。なんか綺麗で。20連荘くらいするといいですね」
「やめてよプレッシャー掛けるの。でも10連くらいはして欲しいなあ」
しかし2人の願い虚しく、一発目からラオウの手元が怪しく光る。
「げ!いきなりですか、ラオウちゃん・・・・」
当然の如く倒れるケンシロウ。そして祈りを込めてベットを叩くもバシューン・・・すると・・・
遠藤さん側の隣に座っていた二十歳くらいの頭悪そうなガキが遠藤さんの台を指差して、
「アハハハハ、ダサッ!!」などと大声で言い放ちやがった。
しかし遠藤さんは「いやあツイてないよね」と大人の対応。私は内心ホッとした。

しばらくすると今度はそのガキの台に北斗降臨。(オーラ不明)
しかしどうやら一発目で倒された模様。
渾身の力を込めてベットを叩くガキ。
願い虚しくバシューン。
私は内心ザマーミロと思いつつ眺めていた。
遠藤さんは先ほどの報復のつもりか、ガキの台を指差して「アハハハハ、ダサッ」と悪戯っぽく言った。
私は少し嫌な予感がした。(このガキは遠藤さんに絡んでくるのでは・・・)
案の定ガキは絡んできた。
吸っていた煙草をいきなり遠藤さんの台に投げつけ、「ふざけんなよ」と言ってきた。
遠藤さんが「なんだよ。おあいこだろ?」と軽くあしらうと、ガキは怒り満面の様相でどこかへ消えていった。

「随分なクソガキですね」「まったくだよな。おあいこなのにな」
そんなやりとりをしていると、ガキが4人の仲間を連れて再登場。どいつもコイツも頭が悪そうである。
そしてガキは「おいオッサン、ちょっと来いよ」と言った。
少しも動揺する事なく「はあ?」と遠藤さん。「いいからちょっと来いや」とガキB。
私は危険人物に喧嘩を売っているガキ共の今後を憂い、「お前らヤメとけよ」と一応忠告した。
しかしガキ共は「いいからお前もちょっと来いや」と折角の忠告を完全無視。
「○○君は来なくていいよ。絡まれてるのは俺だから。ちょっと話聞いてくるよ」と遠藤さん。
するとガキ共は「いい根性してるね。ひょっとしてオタクヤクザ?」などと言ってヘラヘラ笑っている。
頭悪そうだと思っていたが、中々いい読みである。そうなのだ、その人はヤクザなのだ。
サラリーマン然とした風貌から、ガキ共は完全に勘違いをしているようだが・・・
そしてガキ5人と遠藤さんは店の外へ消えていった。
私はその後一時間程店で待っていたが、結局ガキ共も遠藤さんも店には戻らなかった。

後日私は遠藤さんに事の顛末を聞かせてもらった。
要約するとこうである。
1 一応は話合いで終わらせようとした。しかしガキは拳を振るってきた。ナイフをチラつかせた者もいた。
2 すべてのガキが自分を殴ったのを機に、反撃開始。(正当防衛成立?)
3 ガキ2人を殴り倒したところでガキ共アッサリ降参。
4 免許証等で全員の住所を取る。
5 後日親を交えて示談を持ちかける。

ガキ共は親同伴で頭を丸め謝りに来たらしい。
示談金の額は不明だが、遠藤さんの態度から察するに結構な額だったと思う。

血気盛んな皆さんに忠告。人は見かけで判断しない方がいいですよ。
それと、顔は爽やかでも目の怖い人は要注意です。

   完