スレ違いでスマンが…

俺の妹は、とても口が悪い。俺を「兄」としての言葉ですら呼ばない。
学校もロクに行かず、ガラの悪い女友達と連日連夜遊び呆けていた。しかし、そんな妹も高校生になり、俺は少し落ち着いてくれる事を願った。

しかし、妹は何も変わらなかった。むしろヒドくなってる印象すら受けた。でも俺はそんな妹を蔑んだり、叱ったり呆れたりはしなかった。
妹がそうなってしまったのは、両親が仕事を口実にほったらかしにしすぎたのに原因があるからだ。妹は愛情に飢えていた。
だから俺はただ、妹が哀れでしかたなかった。
ある日、俺は何気にカレンダーを見た。そしてある事を思い出した。
妹の誕生日だった。
俺は妹とじっくり話し合うきっかけにでもなればと思い、母親がまだ仕事をしていなかった頃に、俺と妹をよく連れていってくれた洋菓子店でケーキを買った。
正直バイトの給料日前のツラい時だったが、俺は惜しまなかった。
少し楽しみな気分で家路につきながら、妹とどんな風に話そうかと色々思案していた。

はやる気持ちを抑えながら俺は玄関を開け、家に入った。
しかし、家には誰もいなかった…。

両親がいないのはいつものことだからどうでもいい。でも妹にはメールをしておいたのだが、やはり無意味なようだった。
俺はケーキを冷蔵庫に入れておき、妹の部屋に置き手紙をした。
「葵へ。
お誕生日おめでとう。お前の誕生日に何か買うなんて始めてでどうしていいかわからんかった。だから結局ケーキにした。
昔よく食べた懐かしいやつだぞ。よかったら食ってくれ。
親父達はともかく、俺は葵の事、大事に思ってるからな。今を楽しむのもいいけど、身体を壊さないようにな。」

あまり気の利いた文も書けず、俺はそれだけを書き残して眠りについた。

次の日。俺が目を覚ましたのは昼前だった。その日はバイトも休みで、一日中ゴロゴロしようなどと考えていた。
布団から這い出して、テレビのリモコンを探す。その時、机の上に何かあるのを見つけた。
葵からの置き手紙だった。俺はいそいで紙を広げる。
「昨日はありがとう。ケーキ食べた。すごく美味しかったよ。なんでかわからないけど、食べてたら涙が出てきてとまらなかった。
私、バカだった。なんもわかってなかった。でも、もう心配かけないから。」

そして文末にはこう締め括られていた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
俺はすぐに部屋を飛び出した。そして家中を駆け回って妹を探す。玄関に行き、靴を見た。妹の派手なミュールはある。その代わりに制服用の革靴がなかった。妹は数ヶ月ぶりに学校に登校したようだった。
夕方になり、玄関のドアが開く音がした。俺はすぐに駆け付けると、制服姿の妹が佇んでいた。
「ただいま…」
消え入りそうな声で妹が言ったのを俺は聞き逃さなかった。
「おう。おかえり!」俺は嬉しさのあまり、変なテンションで応えてしまった。
「久々だから疲れただろ?」
「別に…」
妹はわざと素っ気ない返事をしたが、顔を真っ赤にして照れていた。
その日の晩。妹は俺に晩飯を作ってやると言い出した。慣れない手つきで出来上がったもの…。
焦げかけの崩れた卵焼きとハム。
「お礼だよ…」
それだけ言って妹は部屋に行ってしまった。俺は嬉しくてたまらなかった。飯が喉をとおらない程に…。
その日から、妹は人が変わったようになった。金髪に近い頭を真っ黒にし、夜遊びをやめ、毎日学校に行くようになった。

綺麗に染め直した黒髪が綺麗だと俺が言うと、「別に綺麗とかじゃないしッ…変な事言うな!バカ!」
と、口調はまだまだ以前の調子ながら、真っ赤に照れていた。
そしてなにより俺の事を、数年ぶりに「お兄ちゃん」と読んでくれるようになった。
随分前に壊れてしまった俺達兄妹の関係が、やっと元に戻りつつあると確信していた。

両親は妹の更正ぶりにただ度肝を抜いていたが、俺は意地でもその理由を教えてやらなかった。
両親には教える意味もなけりゃ、必要もない。
妹とはよく買い物に行ったり、遊びにいくようにもなった。他の兄妹でも、ここまで仲良くはできないだろうとさえ思えた。

そんな俺の大切な妹は…一年前にこの世を去った。
飲んだくれのクソ野郎の運転する車に、俺の最愛の妹の命は一瞬で奪われた。
俺は復讐してやろうと思ったが、男は俺の手の届かない塀の中に入ってしまった。
妹を失ってしばらくは、俺にも死が見えた。だけど、妹がどこかから俺に「オイ、お兄ちゃん!私の分も生きてよ!バカ!」とか言ってる気がして、俺は今日も頑張って生きてる。

(長文スマン…)