秘祭(新潮文庫)石原慎太郎(著)
    
人口わずか十七人の南西諸島の孤島をリゾート化しようと、観光会社の青年、敏夫が島に赴任する。
前任者が事故死した為だ。
   
島の和やかな雰囲気や、島唯一のいい女、タカ子に魅了され島に惚れ込む。
タカ子も敏夫が気にいったようで、二人は即、獣のように愛を交わすようになる。
社命で赴任したとはいえ、仕事らしい仕事はせず、タカ子とセックスばかりしている敏夫だが、島で生活していく内に、段々と島のタブーが見えてきた。
   
まずおかしいのは、檻に入れられている男、ミノルの存在。
言葉は発っせず、原始人のような風貌で獣のようにウーウー吠えているだけ。
島の人は
「ミノルは頭が弱くて乱暴することがあるのでね」
とあっさり言うが、明らかに異常な光景だ。
   
さらにある晩、漁に出た敏夫が見たのはタカ子が他の男と交わっている姿。
タカ子に問い質すと、「嫌なら私を島から出して」と懇願する。
どうやらタカ子は島の男全員と寝ているらしい。
このことから、段々とこの島の異常性が露わになっていく。
   
乱婚、近親相姦、暴力、拷問、殺人…。
近親による性交の歴史により、この島は狂人パラダイスと化していたのだった!
前述した、檻の中の男は島の秘密を漏らさないよう、舌を切られていたのだ。
   
敏夫の前任者もこの秘密を知って殺されたらしい。
そして、知りすぎてしまった敏夫は、タカ子を連れて島を出るため島の老人たちに、「訴えることもできるんだぜ」と脅す。
老人たちは「わしらが島を出ます。だからあんたもこのことは黙っておいてくれんかね」
と、屈伏したように見せかけるが、結局、敏夫は別れの酒と称した杯に毒を盛られて眠らされ、ボコボコに拷問された揚句殺されてしまう。
   
時は流れ、何も知らない敏夫の後任の青年がまた島に赴任して来た。
木の下に不自然に土が盛り上がった土饅頭が二つある。
「あれは何ですか」と、島の人に聞いてみると、
「ああ、あれは昔から人魚の墓と言われておってな…」
…それが敏夫とその前の前任者の墓であり、
いずれ自分もそこに葬られることになるとは思いもしないであろう…。